愛媛FCとの一戦は谷本の恩返し弾、テウォンのゴールで同点とし、2戦連続のPK戦を制した。
この百年構想リーグは勝ち点と賞金額が連動するレギュレーションとなっているため、PK戦で勝ち点2を拾えたことは非常に大きい。本当に大きい。チリツモって大事よね、というお話である。
この試合も相手に先制を許す展開となったが、ここまで来ると「先制されるのが様式美」くらいに思い始めているサポーターもいるのではないだろうか。
しかし冷静に振り返ると、J2・J3百年構想リーグ、この愛媛FC戦を含めて5試合で、スコアレスドローだったFC大阪戦を除く4試合すべてで先制点を許している。
様式美なんて言って笑っていられない事態である。
もっとも、そのうち3試合で勝点を獲得しているのは素直に評価すべき点でもある。
ということで今回は、「それって伸びしろがあるってことだよね」と無理やりポジティブに解釈しつつ、カターレ富山の守備、とくにプレスの構造を中心に試合を振り返っていきたい。
- スタッツ
とにもかくにもスタッツから。
PK戦終了
— カターレ富山 (@katallertoyama) March 8, 2026
🏆明治安田J2・J3百年構想リーグ 第5節#カターレ富山 2-2 (PK 4-3) #愛媛FC
54分 #谷本駿介
67分 #キムテウォン#百年構想リーグ #Jリーグ pic.twitter.com/vykZexCjzF
正直、見慣れてきたスタッツだ。
体感的にはもう少しシュートが多かった印象もあるが、公式スタッツは何をシュートとしてカウントするのか、などの定義は改めて整理してみたいと思う今日このごろである。
- プレスには2種類ある
現ドイツ代表監督のナーゲルスマンは著書でこう語っている。
「私がラルフ・ラングニックから最初に教えてもらったことの1つは、プレスに『プル型』と『プッシュ型』があることだ」
「プル型」とは、前線の選手がプレスのアクションを起こし、それが号砲になって後方の選手がついて行くやり方である。フォワードが前から「引っ張る」イメージだ。
一方、「プッシュ型」は後方の選手が指示を出してプレスをかけるやり方だ。ディフェンスラインを整えてから、後ろ主導でスイッチを入れる。ディフェンスが後ろから「押す」イメージである。
理想は状況に応じて、両方を使いこなすことだ。
- ラングニック派の監督たち
ラングニックはレッドブルグループのスポーツディレクターを務め、
多くの指導者に影響を与えた人物である。
現在はオーストリア代表監督を務めている。
彼の影響を受けた監督たちは「ラングニック派」と呼ばれることもあり、
日本で有名な例を挙げると、香川真司が在籍していた頃のドルトムントを率いたクロップがその代表格だ。
ナーゲルスマンもその一人である。
- カターレ富山の前線プレス
安達監督のチームは、前線からのハイプレスを非常に重視している。
今シーズン初勝利となった讃岐戦では
• 二度追い
• 三度追い
が当たり前の守備強度を見せていた。
そして実際に、守備強度の高かった選手がその後スタメンに定着している。
それだけこのチームにとって、前線守備は重要な評価基準になっている。
そのカターレ富山のプレスを意識しながら、愛媛FCに先制点を許した場面を見ていきたい。
- 失点シーン
愛媛FCからすれば非常にきれいな崩しだったと言える、この失点は、相手ゴールキックから数本のパスで崩された場面だった。
ゴールキックスタートのため、厳密にはフォワード主導のプル型プレスとは少し違うかもしれない。
ただし注目すべきは、前線の高い立ち位置に連動した選手と、連動していない選手の間に大きなスペースができていたことだ。
左サイドで旋回する動きで守備を外され、そのスペースを使われる。
そのときカターレのディフェンスラインは、ハーフライン付近に3枚が残る形になっていた。
つまり
• 前線と中盤は高い
• ディフェンスラインは低い
という構造になり、中盤に大きな空洞ができていた。
そのスペースで前田や阿部にボールを持たれ、ボールホルダーにプレッシャーがかからない状態に。
数的不利のディフェンス陣はラインを下げるしかなく、結果的に日野や樺山に勢いを持ったままゴール前への侵入を許してしまった。
ちなみに吉平はこのスペースを埋めるために戻ってきていたが、間に合わなかった。
- 樺山の役割
Football LABによると、樺山は普段は2列目の選手であり、この試合は今季初の最前線スタメンだったらしい。
この起用から考えると、カターレ富山の守備ブロックの間にスペースができることは、愛媛FCにスカウティングされていた可能性が高い。
いわばゼロトップのような役割で、
• 樺山が中盤へ落ちる
• 前向きの選手にボールを渡す
• 攻撃を加速させる
という形で、このスペースを有効活用されていた。
実際このプレーにはかなり苦しめられた印象がある。
- セカンドボール問題
特に前半、解説の堤さんも言っていたが、セカンドボール争いで明らかに負けていた。
これも原因は同じで、ディフェンスラインと中盤ラインが離れていたことである。
愛媛FCのディフェンスは
1. カターレの前線を引きつける
2. ロングボールを入れる
というシンプルな戦術を取っていた。
カターレの中盤は前線に引っ張られるため、ディフェンスと中盤の間にスペースができる。
そこで愛媛FCの2列目の選手がセカンドボールを回収する。対してカターレ側はセカンドボールを拾える距離に選手がいないという状況だった。
愛媛FCからすれば、これでセカンドボールを高確率で回収できるなら、わざわざリスクを取ってビルドアップする必要はない。
PK戦勝利ということで、注目されるのはゴールキーパー原田だろう。
個人的には前半終了間際のビッグセーブを挙げたい。
前半はほとんど攻撃の形を作れていなかった。もしあの場面で2失点目を喫していたら、実質試合が終わっていた可能性もある。
崩しの形としても非常に完成度が高く、正直完全にやられた場面だった。
あのセーブによってチームは勝ち点への望みをつなげた。
その後、前半終了までの数分間、得点こそ奪えなかったものの攻勢に転じることができた。
後半の巻き返しは選手交代がきっかけのように見えるが、流れを変えたのは原田のあのセーブだったとも感じている。
- カターレ富山の守備課題
前半は正直かなり苦しかった。
サッカーは相手があるスポーツとはいえ、それでもチームとして何もかみ合っていない時間帯だった。
プレスの連動が崩れる問題は以前からあるが、これはディフェンスだけの問題ではない。
前線の選手も
• 後ろの状況を確認する
• 行かない判断をする
ことが必要だろう。
プレスに行けないときはカバーシャドウでパスコースを切る守備を徹底したい。
ちなみに亀田は後ろをしっかり見てから前線守備に移る。さすがフットサル出身という感じである。
そして後ろが整っているなら、プッシュ型プレスももっと使えるはずだ。ディフェンスリーダーの役割を誰が負うのか、選手の成長の期待したい。
守備を突き詰める必要がある
長いリーグ戦で安定して結果を出すために必要なのは、やはり失点を減らすことだ。
火力の高い攻撃は見ていて楽しい。それに惹きつけられる気持ちもよく分かる。
しかしクラブとしてより高い場所を目指すのであれば、守備の完成度をさらに高めることが必要ではないだろうか。

